路地猫のひとり言

アックアアルタ

10月31日。今日はホテルから港に移動する日だ。運悪く、早朝からどしゃぶり。TVをつけるとベネチア付近のマークは「雨」を通り越して「雷雨」になっている。最悪だ。それでも7時半頃、荷物のパッキングをしようとベッドから這い出すと、あれ?TV画面の時刻が6時半になっている。パチパチと違うチャンネルをつけてみても同じ。どうやら今日でサマータイムが終了し、時間が1時間戻ったらしい。ホテルのどこにもそんな表示はなかったのに。

まあ、それならば焦ることもない。疲れもたまっているしもう一眠りしようとベッドに戻る。ちょうどこの頃、窓の外で無粋なサイレンが鳴っていた。実はこれこそがアックア・アルタ(高潮)を告げるサイレンで、地元の人はこのサイレンを聞くと急いでじゅうたんや家具を上階に上げ、運河に面したホテルは客が濡れないように足場を設置するのだ・・とマニラに戻ってきてからわかるのだが、その時の私はAqua Altaという言葉の意味すら知らなかった。知っていれば昨日のニュースで何度も映っていた映像が「ベネチアで年に1度の洪水がきている」とわかったはずなのに。8時すぎに再び起きて朝食をとる。雨も段々小降りになってきたみたいだ。ホテルには11時までいてよいのだけど、雨がまた降り出さないうちに駅まで行き、荷物を預けてもう少し観光するか、とレセプションに下りて行った。

ちょうどそのとき、ホテルの入口から英語を話す中年のご夫婦がズボンをひざまでまくり、足をべたべたに濡らして帰ってきた。「What happened?(どうしたんですか?)」とびっくりする私達。「サンマルコ広場まで行ってきたんだけど、ひどいもんだったわ。もう、あっちもこっちもウエットよ!こうしないと歩けなかったわ!」と興奮ぎみの2人。これを聞いた私達は「雨ひどかったもんねー。サンマルコなら仕方ないか」とまだ呑気だった。ところがいつも冗談を飛ばすレセプションの彼の様子が変。「お客さん、チェックアウトだよね。僕、いそいで伝票切るからとにかく走ってすぐ出ていって!水はすぐそこまで来ているよ。」これだけ聞いてもまだ状況が飲み込めない私達。「水って?私達、駅まで行きたいだけよ。水上バスでなら大丈夫でしょ?」彼の答えは「バス停までたどりつければね。とにかく急いで。グッドラック!」

支払いをCATに任せ、先に連れがスーツケースを引っ張って外に出る。「確かに水がどんどんしみ出してきてるよ」

CATが外に出た頃には、ホテル前の小道はじわじわと石畳の間からしみ出た水がたまり始めていた。「とにかく行ってみよう」最初の曲がり角までは順調だった。次の曲がり角を抜けたとき、反対側から歩いてきた人が「Speak English?(英語話すの?)」と声をかけてきた。「ええ」と答える私達。「ここから先はウエットだから裸足で行かないと無理よ」

そんな・・・・まだ駅まではだいぶ距離がある。でも確かに最初の橋の手前で水は30センチほどにもなっていた。ベビーカーを押した韓国人らしい女性が立ち往生している。こっちはダメだ。水上バスの乗り場に行ってみよう。

スーツケースをごろごろ転がして今来た道を戻り、右折。運河に向かう。あと数十メートルでバス停だ。「全然だめだよ」なんと、バス停そのものがすでに水の下になってしまっていた。手荷物だけ持っている身軽な旅行者ならば裸足になって水の中をじゃぱじゃぱと歩くこともできる。でも、このスーツケースには20キロ以上の荷物が入っている。とてもかついで歩くのは無理だ。駅は運河の反対側、200Mもないのにいったいどうしたら?

途方にくれていると、まだ水がきていない運河沿いの高いところにイタリア人らしき男性が携帯電話を片手に立っているのが見えた。あの人、何を呼んだの?ふと右手をみると、空っぽの水上タクシーが駅の方向へ走ってくるのが見える。一か八かだ。

「ハロー!!!ボンジョールノー!!」と大声で叫んでみる。ボートの運転手がちらっとこっちを見た。「ステシオーネ(駅)!プリーズ!」もう言葉なんてめちゃくちゃだ。バス停を指でさし、何でバスに乗らないのか?と怪訝な顔をする運転手。ボートをバス乗り場に近づけたときに状況を理解したようだ。止め場所がないかときょろきょろしたあとで、イタリア人男性が立っていた高台までボートを寄せてくれた。「いくらでいってくれる?」「20ユーロでいいよ」

20ユーロ!!約3000円だ!ボートタクシーは高いといわれているけれど、たった200Mで3000円!暴利なんてもんじゃない。でも、背に腹はかえられない。わかった、といってスーツケースを差し出し、船に乗り込む。駅までは2分とかからない。多分、一生で一番高いタクシー代だろう。

私達を駅で降ろしたあと、すぐにスーツケースを抱え途方にくれた観光客が乗り込んでいったから、この日のボートタクシーはがっぽり稼げたことだろう。

どうにか駅までたどりついたので、駅の荷物置き場にスーツケースを預けて、駅近くのネットカフェでメールチェックをし、昨日買い足した水上バスの1日券を使って外回りの船に乗ってみようと計画。身軽になって駅を出たのだが、なんと、ネットカフェ方向の道は完全に水没。近くの店までは足場が作られているが、その先にはいけそうもない。カフェは行き場を失った観光客ですでに一杯。仕方なく、駅構内のベンチに座って様子を見るしかなかった。

持ってきた本を読むことしかできなかったが、ベンチにすら座れない人が大勢いたので私達はまだマシな方だった。1時間半ほどそこで過ごし、12時過ぎに外の様子を見に水上バス1番の乗り場に出た。が、なんと潮が高すぎて大運河が通れなくなり、1番線は運航休止。ローマ広場行きのバスだけは動いていたので、乗ってみると駅からローマ広場へ向かう運河沿いにある高級ホテルが軒並み浸水している。負け惜しみだけど、この辺の高級ホテルに泊まっていたらホテルから外にでることも出来なかったかもしれない。結局、ローマ広場の周辺もひどい洪水。港行きのバスがすでに走っているようだったので、観光はあきらめて駅に戻りスーツケースを引き取り再びバスでローマ広場に戻って港へ移動することにした。きっと船の方が快適に違いない。
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by rojineko | 2004-10-31 22:14 | Travel | Comments(0)
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11歳のむっちりトンキはドンくさい?!飼い主は遊牧民族。名古屋、京都、東京、マニラ、鹿児島、福岡と住んだ土地は数知れず。この春から秋田と東京のバラバラ生活始まりました!
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